完成した自作曲を書き出す際に悩むのが、どれくらいの音の大きさにすべきか、といったラウドネスの問題。
困ったときはプロに倣え、ということで、比較的最近のプロの曲(ポップミュージック系)のラウドネスを解析してみました。
ここでは基本的に非圧縮のCD音源からデータを取っています。プロはCD音源とストリーミング音源を分けていないようなので、圧縮のかけられていないものを参照したほうが、エンジニアが実際にどういった数値を狙っているのかがわかると思います。
ラウドネスの基礎知識については、下記の記事をチェックしてみてください。
- ラウドネス用語
- プロの曲のラウドネス 邦楽編
- プロの曲のラウドネス 洋楽編
- TWICE – DIVE(2024年7月)
- XG – WOKE UP(2024年5月)
- ドレイク – Rich Baby Daddy(2023年10月)※配信のみ
- エド・シーラン – Eyes Closed(2023年5月)
- SZA – Shirt(2022年12月)
- テイラー・スウィフト – Anti-Hero(2022年10月)
- カルヴィン・ハリス – Stay With Me(2022年8月)
- リゾ – About Damn Time(2022年7月)
- ケンドリック・ラマー – Worldwide Steppers(2022年5月)
- ビリー・アイリッシュ – my future(2021年7月)
- デュア・リパ – Don’t Start Now(2020年3月)
ラウドネス用語
LUFS(Loudness Units, relative to Full Scale):ラウドネス(耳で感じる音の大きさ)を測定する単位。主に放送や音楽ストリーミングの基準として使われる。
Integrated(インテグレイティド):楽曲全体の平均ラウドネスを示す値。統合値。
Short-term(ショートターム):3秒間のラウドネスを測定した値。
Momentary(モーメンタリー):400ミリ秒(0.4秒)間のラウドネスを測定した値。
LRA(Loudness Range):楽曲内の最小から最大ラウドネスまでの範囲。ただしこちらは曲全体の聴感上の音圧や抑揚を知るのには適していないので、音作りの参考にはしなくていいと思います。
Sample Peak(サンプルピーク):デジタルオーディオにおける音量レベルの基準で、0dBFSが最大レベル。通常のリミッターのCeilingで設定する値。
True Peak(トゥルーピーク):デジタルからアナログへの変換時に検出されるピークレベル。0dBTPが最大レベル。トゥルーピークリミッターで制御可能。
ここに掲載している曲のラウドネスの数値は、iZotope RXで測定したものです。
単体で使えるRX Audio Editor(Standard・Advanced版のみ付属)に音楽ファイルをドラッグ&ドロップするだけで、すぐに結果を表示してくれるので便利です。
プロの曲のラウドネス 邦楽編
※曲名の後に書いてある日付は、その曲が収録されているメディアの発売日です。シングルリリースはそれよりも前の場合もあります。
宇多田ヒカル – Goodbye Happiness 2024 Mix(2024年4月)
Short-term:-7.0
Momentary:-6.4
LRA:5.0
Sample Peak:-0.01dB
True Peak:+0.5dB
アルバム「Science Fiction」収録曲。
Creepy Nuts – Bling-Bang-Bang-Born(2024年3月)
Short-term:-6.3
Momentary:-5.1
LRA:2.5
Sample Peak:-0.2dB
True Peak:-0.2dB
シングル「二度寝/Bling-Bang-Bang-Born」収録曲。
「二度寝」のLUFSは-8.5。
YOASOBI – アイドル(2023年10月)
Short-term:-4.5
Momentary:-3.6
LRA:3.8
Sample Peak:-0.1dB
True Peak:+0.3dB
アルバム「The Book 3」収録曲。
ヨルシカ – 左右盲(2023年4月)
Short-term:-5.6
Momentary:-4.7
LRA:12.9
Sample Peak:0.0dB
True Peak:+0.2dB
アルバム「幻燈」収録曲。
Ado – うっせぇわ(2022年1月)
Short-term:-3.5
Momentary:-2.8
LRA:3.3
Sample Peak:0.0dB
True Peak:+2.3dB
アルバム「狂言」収録曲。
このアルバムの中では2曲目の「踊」のLUFSが一番高く、その値、なんと-3.9。
プロの曲のラウドネス 洋楽編
TWICE – DIVE(2024年7月)
Short-term:-5.5
Momentary:-4.1
LRA:4.6
Sample Peak:-0.65dB
True Peak:-0.5dB
日本5thアルバム「DIVE」収録曲。
トゥルーピークが-0.5dBとかなり抑えめです。
トゥルーピークに関しては曲によってバラバラで、1曲目のBeyond the Horizonは-1.3dB(最小)、7曲目のPeach Sodaは+0.4dB(最大)となっています。
XG – WOKE UP(2024年5月)
Short-term:-6.8
Momentary:-5.3
LRA:3.9
Sample Peak:-0.3dB
True Peak:-0.2dB
シングル「WOKE UP」収録曲。
日本人7人組のユニットなのですが、活動の拠点、事務所、レーベルが韓国のようなので、洋楽のほうに載せました。
ドレイク – Rich Baby Daddy(2023年10月)※配信のみ
Short-term:-4.9
Momentary:-4.1
LRA:4.6
Sample Peak:0.0dB
True Peak:+1.6dB
アルバム「For All The Dogs」収録曲。
※配信のみのリリース(AACファイル)
エド・シーラン – Eyes Closed(2023年5月)
Short-term:-6.5
Momentary:-5.7
LRA:5.9
Sample Peak:0.0dB
True Peak:+0.5dB
アルバム「- (Subtract)」収録曲。
リードシングルのEyes Closed以外は、トゥルーピークが-0.1〜+0.1dBの範囲に収まっています。
SZA – Shirt(2022年12月)
Short-term:-6.7
Momentary:-4.4
LRA:3.5
Sample Peak:-0.2dB
True Peak:-0.2dB
アルバム「SOS」収録曲。
25曲中22曲が、サンプルピーク-0.2dB、トゥルーピーク-0.1〜-0.2dBになっています。Love Language、Nobody Gets Me、Forgivelessの3曲はそれよりも低い値です。
テイラー・スウィフト – Anti-Hero(2022年10月)
Short-term:-6.0
Momentary:-5.0
LRA:6.4
Sample Peak:0.0dB
True Peak:+1.2dB
アルバム「Midnights」収録曲。
このアルバム(全16曲)の曲ごとのLUFSは、-9.4。-9.6、-8.6、-10.1、-9.7、-9.7、-8.9、-10.7、-10.5、-13.2、-8.8、-13.5、-9.8、-8.4、-10.7、-13.2で、平均は-10.3。
カルヴィン・ハリス – Stay With Me(2022年8月)
Short-term:-7.0
Momentary:-5.2
LRA:3.8
Sample Peak:0.0dB
True Peak:+0.9dB
アルバム「Funk Wav Bounces Vol.2」収録曲。
このアルバム(全14曲)の曲ごとのLUFSは、-13.5、-9.5、-8.5、-8.0、-9.3、-8.6、-7.8、-10.0、-9.5、-8.6、-9.2、-9.5、-10.0、-10.2で、平均は-9.4。
リゾ – About Damn Time(2022年7月)
Short-term:-6.7
Momentary:-4.8
LRA:3.5
Sample Peak:0.0dB
True Peak:+0.9dB
アルバム「Special」収録曲。
ケンドリック・ラマー – Worldwide Steppers(2022年5月)
Short-term:-7.1
Momentary:-5.5
LRA:2.7
Sample Peak:-1.2dB
True Peak:-1.1dB
アルバム「Mr. Morale & The Big Steppers」収録曲。
True Peakが-1.0以下になっているのはこの曲と「N95」だけで、そのほかの曲はすべてSample Peakが0.0dBでTrue Peakが0dB以上。
ビリー・アイリッシュ – my future(2021年7月)
Short-term:-6.3
Momentary:-4.0
LRA:10.7
Sample Peak:-0.01dB
True Peak:0.0dB
アルバム「Happier Than Ever」収録曲。
アルバム曲のトゥルーピークはバラバラで、my futureのようにトゥルーピークリミッターを使っているものもあれば、そうではないものもあります。5曲目のOxytocinはトゥルーピークが+1.6dB。
アルバム表題曲のHappier Than Everは、途中からかなり音を歪ませていて波形がすごいことになっています。
デュア・リパ – Don’t Start Now(2020年3月)
Short-term:-5.0
Momentary:-3.7
LRA:5.2
Sample Peak:-0.1dB
True Peak:+0.3dB
アルバム「Future Nostalgia」収録曲。
曲は随時追加予定なので、時折チェックしていただければ。