ボーカルレコーディングにオススメのヘッドホン【ボーカル録音講座1-3】

ボーカルレコーディングをする際は、伴奏の音をマイクが拾わないようにヘッドホンをする必要があります。
今回は、どのようなヘッドホンがレコーディングに適しているかについて解説します。

ヘッドホンは密閉型を選ぼう

ヘッドホンは、密閉型と開放型（オープン型）の2種類に分かれます（この中間のセミオープンというタイプもあります）。

密閉型は、その名の通り耳まわりが密閉されていて音が外に漏れにくいタイプのヘッドホンです。
レコーディング用のヘッドホンに適した構造といえます。
ヘッドホンタイプの割合としては、こちらのほうが圧倒的に多いです。

一方、開放型はヘッドホンの耳あての外側にあるハウジングと呼ばれる部分にメッシュ状の穴があいているタイプのヘッドホンです。広い音場や抜けのいい音という特徴を持っています。

開放型は部屋での音楽鑑賞には適しているのですが、構造上音漏れがあり、遮音性が必要なレコーディングには向いていません。

というわけで、レコーディングには密閉型を使うようにしましょう。

注意点としては、密閉型だからといって、音が完全に漏れないわけではないということです。
そのため録音したボーカルをチェックしたときに、かすかに伴奏の音が混じることもあります。

こういった音は、たいていほかのトラックとミックスすれば問題にならないものですし、気になる場合は、指定の音量以下の音をカットするノイズゲートというエフェクトを活用する手もあります。

もしレコーディングの段階で伴奏の音が混じるのをできるだけ防ぎたいと考えるなら、シンプルな方法ですが、ヘッドホンの耳の部分を手で押さえながら歌う、というのが効果的です。

レコーディングにオススメのヘッドホン

ただボーカルを録音するだけなら伴奏が聴き取れるイヤホンで十分なのですが、そのあとのノイズチェックや編集のことを考えると、モニターヘッドホンがあると便利です。

モニターヘッドホンというのは、音をチェックするのに適した特性を持ったヘッドホンのことです。ほかのヘッドホンと比べてなにか特別な機能があるというわけではありません。サウンドチェックしやすいクリアで色付けのないフラットな音を持ったものを、メーカーがモニターヘッドホンとして売り出しているといった感じです。

音楽鑑賞には向いていないといわれることもありますが、音のクリアさはありますし、安価なヘッドホンやイヤホンと比べれば十分音楽を楽しむことができる品質を持っているといえます。もっとも低音がガンガンに響くような迫力のある音が好みの方は満足できないと思いますが。

MDR-CD900ST／SONY（ソニー）

日本の業界標準といってもいい定番のモニターヘッドホン「MDR-CD900ST」。通称赤帯。

迷ったらこれにしておけばいいといってもいいほど、音楽制作の世界において広く使われています。
定番品なので替えのパーツも手に入れやすく、長く使っていくことができます。

MDR-7506／SONY（ソニー）

同じく定番品の「MDR-7506」。通称青帯。宇多田ヒカルさんが使用していることでも話題になりました。

MDR-CD900STとの形状における違いは、折りたたみ式でカールコードであることと、標準ジャックだけでなくステレオミニジャックにも対応していることです。持ち運んだり、スマホや携帯音楽プレイヤーで聴くことがある場合はこちらのほうが便利です。まあMDR-CD900STでもステレオミニジャックの変換コネクターを使えばいいだけなのですが。

周波数特性は、MDR-CD900STが5～30,000Hzなのに対して、MDR-7506は10～20,000Hzと狭いですが、そこに関しては広ければいいというものでもないですし、そんなに気にしなくてもいいかと。

K271MK2／AKG（アーカーゲー）

オーストリアの音響機器ブランドAKGの「K271MK2」。
この記事のトップ画像の女性がしているのもこの機種です（ロゴは消してありますが）。
遮音性に優れ、モニターヘッドホンとしての確かな性能がありつつ値段も抑えられていて、コスパの高い一品といえます。

ATH-M50x／AUDIO-TECHNICA（オーディオテクニカ）

アリアナ・グランデが（たぶん）使っているオーディオテクニカの「ATH-M50x」。
なぜたぶんなのかは下記の記事をご覧ください。

ちなみにアリアナが使っているのはレッドのATH-M50xRDなのですが、こちらは生産完了品で、入手するなら中古品になります。
ブラック、ホワイト、ガンメタリックグレー、パープルブラックは今でも新品が手に入ります。

Signature PRO／ULTRASONE（ウルトラゾーン）

ドイツの音響機器ブランドULTRASONEの「Signature PRO」。
世界初（？）のDTMドラマ「神ちゅーんず 〜鳴らせ!DTM女子〜」で、主人公の十倉凜が身につけているのがこのヘッドホンです。
主人公はお金持ちの友人の力でゲットしたわけですが、値段からして高校生のDTMerがするヘッドホンじゃないですね（笑