コンプレッサーの設定は難しそうに思えるかもしれませんが、基本の5つのパラメーターの役割をおさえておけば、どのタイプのコンプレッサーでも使えるようになります。
コンプレッサーの種類によって同じ設定でも出音は変わってくるので、ここでさらっと使い方を覚えて、あとは実際に音を出していろいろと試してみてください。
コンプレッサーのおもなパラメーター
1. スレッショルド(Threshold)
コンプレッサーが作動する音量レベルを指定するパラーメーターです。
たとえばこの値が-15だとすると、コンプレッサーをインサートしたトラックの音が-15dBを超えるとコンプレッサーが作動して、超えた部分に対して音を圧縮する働きをします。
この値を低くするとコンプレッサーが深くかかることになり、反対に値を0dBに近づければ近づけるほどコンプレッサーは浅くかかることになります。
スレッショルドの設定は元音の音量レベルによって変わってくるので(元音が小さければスレッショルドも低くしないとコンプレッサーは作動しない)、本やネットなどに載っているコンプレッサーの設定例を参考にする場合においても、この値だけは自分で調整しなければなりません。
たいていのコンプレッサーには、ゲインリダクション(GR)というコンプレッサーのかかり具合がリアルタイムでわかるメーターがついているので、それを見ながら調整しましょう。
ちなみにヴィンテージ系のコンプレッサーでは、スレッショルドがついていないものもあります。
それらのコンプレッサーは内部でスレッショルドが固定されており、Input(入力音)のゲインを調整することで、コンプレッサーのかかり具合を設定します。
2. レシオ(Ratio)
音を圧縮する比率を指定するパラメーターです。
たとえばレシオが3ならば、スレッショルドで設定した音量を超えた音に対して、3:1の比率で圧縮します。音が3はみ出たとしたら、それを1に圧縮するということです。
この値が大きくなればなるほど、圧縮度合いは高まっていきます。リミッターがレシオ無限大(∞)のコンプレッサーのようなものといわれるのはこうした理由からです(レシオが無限大になればスレッショルド設定値を音が超えなくなるので)。
3. アタック(Attack)
スレッショルドの値を超えた音が圧縮されるまでの時間を指定するパラメーターです。単位はミリセカンド(ms。1/1000秒)。
簡単にいうと、コンプレッサーが音にかかりはじめるまでの時間を決めるものです。
この値が大きければ音の立ち上がりの部分は圧縮されないので、元の音の雰囲気を残すことができます。
クローズドハイハットのような持続時間が非常に短い音に対してアタックを遅く設定してしまうと、コンプレッサーの効果を感じにくくなってしまうので注意が必要です。
4. リリース(Release)
コンプレッサーが作動して圧縮された音がスレッショルドの値を下回ったときに、元の音量に戻るまでの時間を指定するパラメーターです。単位はミリセカンド。
アタックと逆で、コンプレッサーの効果が解除されるまでの時間を決めるものです。
この値が大きいと、コンプレッサーの効果が長く続くということになります。
5. メイクアップ・ゲイン(Make-Up Gain)
音量を調節するパラメーターです。
コンプレッサーで圧縮しただけでは、当然音量は下がってしまいます。これを設定することで、圧縮によって下がった音量を持ち上げることができます。
オートゲインという自動で音量を調節してくれる機能がついているものもありますが、自分の耳で確かめて調節したほうがいいでしょう。
その他のパラメーター
これまでに解説した5つのパラメーターがコンプレッサーの基本となりますが、最初に載せた画像にはほかにもいくつかのパラメーターがあるのでそれについて説明します。これらのパラメーターは、コンプレッサーの種類によってはついていないものもあります。
ホールド(Hold)
コンプレッサーによる圧縮が持続する時間を調整します。
アナリシス(Analysis)
コンプレッサーに入力される音の解析を、PeakでするかRMSでするかを調整します。
簡単にいうと、Peakは瞬間的な音量、RMSは平均的な音量を表すものです。
各トラックについている音量メーターはPeakメーターで、波形そのままに音の大小を表示します。一方RMSは、人間の耳で聴いたときの音量感を示すもので、音圧を把握したいときに用いられます。
瞬間的に音が大きいものを抑えたいときはPeak寄りで、ある程度の長さを持った音をならしたいときはRMS寄りがいいでしょう。
ソフト・ニー(Soft Knee)
コンプレッサーのかかりはじめの部分がゆるやかになります。レシオの値が大きく、コンプレッサーのかかりはじめの部分が不自然な場合は、これをオンにすると軽減されます。
コンプレッサーのサンプル比較
コンプレッサーなしのドラムループと、コンプレッサーをかけたドラムループの比較です。
コンプレッサーなし
コンプレッサーあり
なにもかけていないバージョンがドライな響きであるのに対し、コンプレッサーをしっかりかけたほうは音の大小の差が縮まり、ハイハットやスネアの余韻部分が持ち上がり、全体的に迫力が出ているのがわかると思います。
アタックを最速にしているので、キックやスネアの立ち上がりの部分も抑えられています。
この2つのどちらが正解ということはなく、あくまで自分がどのようなサウンドを求めるかによります。
もしかすると、コンプをかけてもこの程度しか変わらないの? と思う方もいるかもしれませんが、補正としてコンプを使うときはそこまで大きく変化させる必要はありません。
まずはプリセットを試してみよう
これまでコンプレッサーのパラメーターについて解説してきましたが、仕組みは理解できたけど実際にどういう設定にすればいいかよくわからない、という方も多いかと思います。
そういったときに役立つのが、あらかじめパラメーターが調整されているプリセットです。
コンプレッサーにはたいていそれぞれの楽器やボーカルに適したプリセットが用意されています。
まずはその中から自分のイメージに合うものを適用してコンプレッサーのかかり具合を確かめて、必要に応じてパラメーターを調整する、という方法がいいでしょう。
コンプレッサーが実際にどのようにかかるかを知るには、EQと同じく値を極端にしてみる、というのが効果的です。
プリセットを適用して、値を極端に上げ下げして効果を確認する。これを何度か試すことによって、コンプレッサーの効果を実感し、どのように使うべきかを理解することができるでしょう。
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