日本が世界に誇る楽器メーカー「ROLAND(ローランド)」「YAMAHA(ヤマハ)」「KORG(コルグ)」。
それぞれTRシリーズ(TR-909、TR-808)、DX7、M1等の電子楽器の名機を生み出してきたわけですが、そのプリセットを作る人ってすごいですよね。
あまり表には出てきませんが、それらを使って世界中の音楽が生み出されて、さらにトレンドまでも作っているわけですから、もっと注目されてもいいような気がします。技術的な知識はもちろん「今、どんな音が求められているか」を察知する芸術的な感性も求められる、まさに職人技の世界です。
メーカーには各国に制作チームがあって、日々新しいプリセットを作る研究を重ねていると聞いたことがあります。
電子楽器の名機を使った楽曲
YAMAHA DX7 Electric Piano
ホイットニー・ヒューストンの代表曲の一つである『Greatest Love Of All』。個人的に大好きな曲です。
DX7の発売は1983年。出だしのエレピの音を聴くと、80年代の空気が押し寄せてきます。
KORG M1 Organ
このオルガン(Organ 2)を使った代表曲といえば、Robin Sの『Show Me Love』。
オルガンのリフが全編にわたって鳴り響き、完全に曲の主役になっています。
Crystal Watersの『Gypsy Woman (She’s Homeless)』。こちらもM1オルガンを使った90年代Houseの大ヒット曲です。
少し前にネットでバズった、空中を歩いているように見えるスリックバック(Slickback)の動画で、この曲を元ネタにした『A Pimp Named Slickback』が使われていたので、それで聞き覚えがある人がいるかもしれません。
KORG M1 Piano
M1のピアノを使った曲といえば、Black Boxの『Ride on Time』があげられることが多いですが、ここでは完全に個人的な好みでReal McCoyの『Another Night』を取り上げたいと思います。
当時、地方に住んでいたのですが、なぜかテレビで夜中にこの曲のMVが何度も流れていて、それで好きになりました。上のMVは公式のものですが、このMVではなく、ロボット(アンドロイド?)が出てくるレトロフューチャーっぽいほうのMVです。この曲をコピーしたような曲も自分で作ったなぁ……(遠い目
実際M1ピアノを使っているかは裏が取れなかったので確実ではないのですが、この音色的におそらくそうでしょう。違ったらすみません(笑
あらためて振り返ると、上のオルガンの曲も含め、M1の音色というのは90年代のHouseシーンと密接な結びつきがあったことがうかがえます。
ROLAND TR-808
1980年発売のROLAND TR-808。
キック、スネア、ハンドクラップ、ハイハット、リムショット、クラベス、カウベル、すべての音が特徴的で、そしていまだにその音色が使われているという伝説中の伝説の名機です。
動画はマーヴィン・ゲイの『Sexual Healing』。808を使った代表的な曲としてよく取り上げられます。
ただ、個人的に808といえば、キックに音程をつけてサブベースとして使ったJungle/Drum’n’Bassが衝撃的で、その音圧のヘビーさはもちろん、こういう使い方があるのか! という目から鱗感もありました。
また、2000年代以降の、シンセをメインとしたヒップホップにも非常によく使われており、あまたある電子楽器の中でも特別な存在となっています。
祝・グラミー賞受賞
電子楽器に携わった人への評価というと、2013年にROLANDの創業者である梯郁太郎(かけはしいくたろう)氏が、グラミー賞の特別功労賞である技術グラミー賞(Technical Grammy Award)を受賞したのが思い起こされます(Prophet-5開発者のアメリカのデイブ・スミス氏との共同受賞)。
実際には電子楽器そのものではなく、MIDI規格の開発に中心的な役割を果たした功績が評価されたわけですが、音楽制作の根幹を支える技術者に光が当たるというのは素晴らしいことだと思います。
過去にSONYとYAMAHAがこの賞を受賞していますが、次はKORGにぜひ獲ってもらいたいところです。音楽界への貢献度でいえば相当あると思うので。
最初にこのコラムを書いてから19年。なぜか今さら大幅加筆してみました。