EQの実践とテクニック – ボーカル編【初心者のためのミックス講座4】

ボーカルのミキシングをする男性
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曲の中心となるボーカルは、歌詞が明瞭に聞こえ、なおかつ前に出てくるようにイコライジングをしていく必要があります。
どのようにすればそういった音質になるのか。ボーカルのEQ調整についての解説です。

ボーカルの低域処理

ボーカル録音時、特に自宅でのレコーディングでは、どうしても周囲の音や機械の動作音などを拾ってしまうことが多いです。そのためEQで超低域をカットする必要があるのですが、さらにその上の100Hzあたりまでハイパスフィルター(ローカット)を使ってばっさりカットしてしまいましょう。

ボーカルのローカット

ボーカルは非常に音域が広いのですが、ベースなどの低域部分と重なるこのあたりの周波数が出ていると音がこもってしまいます。コンデンサーマイクなど、感度が高いものを使っていると特に低音を拾いがちです。

ボーカルをソロで聴くと、低音までしっかり出ているほうが迫力があるように感じられるかもしれませんが、実際オケと混ぜ合わせると、低音がぼやけて歌が前に出てこないことがわかると思います。
歌が埋もれているなと感じてボリュームを上げると、低域も一緒に持ち上がってしまい、聴き心地の悪い音になってしまいます。
歌のおいしい成分はおもに中域にあるので、低域はばっさりカットで問題なしです。

ちなみに市販のボーカルサンプルではあらかじめしっかりイコライジングされているものもあるので、その辺はケースバイケースで。

ボーカルの抜けをよくする

ミックスでは「音の抜けをよくする」という言葉が使われることがありますが、これは音がこもらずすっきりとしていてよく通ることを意味します。

ボーカルのミキシングにおいても抜けのよさは重要です。歌がこもってよく聴こえないボーカル曲を出されてもリスナーも困ってしまいますしね(狙いがあるなら別ですが)。

ボーカルの抜けをよくするEQ

上で述べた100Hz以下のローカットによってそれなりに抜けがいい状態になっていると思いますが、そのすぐ上の200Hz~250Hzあたりを少し下げることによって、さらに抜けがいい音になります。このあたりは楽器のかぶりも増えてくるので、それを避ける狙いもあります。

ボーカルの中域・高域の処理

これまで解説してきた低域の処理に関しては、どのボーカルにもだいたい当てはまるのですが、中域・高域に関してはボーカルによってまちまちです。

ミックス講座2で楽器ごとのEQ設定例を紹介しづらい理由を述べましたが、ボーカルにおいても同様で、男女の違い、歌の音域の違い、ボーカルそれぞれの声質、マイクの特性、録音環境等々、一概に何ヘルツのあたりを削ればいい、というのは難しいです。

というわけで以下のEQ設定例はあくまで参考ということで、実際の調整は耳で判断しながら行ってみてください。

女性ボーカルのEQサンプル

これはとある女性ボーカルのEQ設定です。

低域については上記の通りカットの方向で、中域、高域に関しては、ちょっと耳に刺さるような部分があったので、2kHzあたりを少し削って声に丸みを出しています。また、ハイファイ感が出すぎていたので超高域も少し下げて、バックトラックと馴染むように調整しています。
こういった感じで、ボーカルの録音状態に応じて細かく調整していくといいでしょう。

この女性ボーカルの場合は録音状態がよかったので微調整で済んでいますが、もし録音状態がよくなければ、もっと大胆にイコライジングしてもOKです。結局のところ、出音に満足できるかどうかが最も大事なことだといえます。

もちろんEQをあまり使う必要のない録音状態がいいボーカルが望ましいのですが、実際にはそういうものばかりではありません。固定観念に縛られず、ケースバイケースで対応していきましょう。

コーラスのEQ調整

コーラスに関しては、メインボーカル以上にばっさりと低音をカットしてOKです(200Hzあたりから)。
こうすることでメインボーカルやほかの楽器と干渉しないだけでなく、声に浮遊感が出てきてさらさらとして聴き心地のいいコーラスにすることができます。

コーラスのローカット

この質感のコーラスを2本用意して、パンを使ってそれぞれ左右いっぱいに配置すると、曲の空間がぐっと広がってプロっぽい雰囲気が出てきます。

 

以上、EQの実践とテクニック ボーカル編でした。

前回と今回で、低音パートのキックとベース、メインとなるボーカルのEQ調整について解説してきましたが、この3つをしっかりイコライジングできれば、曲の芯ができてきます。

残りのパートも同じように、足りないところは持ち上げていらないところは削る(おもに低域)という基本にしたがってEQ調整していきましょう。