「This is Japan」はなぜ炎上した? This Is Americaとそのパロディについて

 

前回のコラムでChildish Gambinoの「This Is America」について取り上げたのですが、その最後に

“もし「This Is Japan」なんてものがあったとしたら、どんな内容になるんだろうかと考えてしまいました”

と書いたところ、本当に制作した方たちが現れました。そしてバズりました。悪い方向に……。

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This is Japanの内容

This is Japanの映像内容は以下のような感じです。

裏路地を歩く3人の若者たち。This Is Americaのトラックに合わせて「おもてなし」「インスタ映え」「マジで卍」等、最近の日本を表すポップなワードを散りばめ、最後にダンスを披露します(彼らは日本のトップダンサー)。

This Is Americaを見ていない人にとってはただのスタイリッシュな日本紹介映像にすぎないのですが、元になったMVを見た人には、あまりにも社会批判の意識に欠けていると捉えられたようです。
This Is Americaが提示した内容を考えるといたしかたないのかもしれません。

なぜああいう内容になったか

当該ツイートは炎上後削除されていますが、そこに記されていた投稿者たちのツイートを見る限り、なにか裏の狙いや問題提起をしようと思ってあのような内容にしたとは考えにくいです。

とはいえ映像や音自体はしっかり作り込まれています。
レコーディングをしてトラックを編集して人を集めて映像を撮るなど、楽しみながらも真剣に作っている感じは伝わってきます。
おそらくThis is Japanを批判している人たち以上に、制作者たちはThis Is AmericaのMVを繰り返し見たに違いありません。

This Is Americaについての記事でも書いたのですが、一発の銃声からすべてが変化するあの映像を見れば誰でも、あれがアメリカの現状を批判的な視点で表現したものであるとわかるはずです。

そのことがわかっていてなおあの内容にしたのは、なにも考えていなかったわけではなく、自分たちは同じ切り口にはせずに社会のポジティブな面で日本を表そう、と考えたからではないでしょうか。享楽的ともいえる若者文化にはポジティブさ以外のものも含まれているでしょうが、まあそれは置いておいて。
本人たちはこのことについてなにかコメントしているわけではないので、あくまで推測でしかありませんが。

結局のところそれがうまくいかなかったのは、やはりThis Is Americaの、社会に対する批判的なスタンスが多くの人に支持されているからだと思います。
それを取り除いて別バージョンを作った結果、ポジティブさを伝えたかったはずなのにネガティブな感情を生み出してしまったという感じかと。

This is Japanへの批判

This is Japanに対する批判をざっと見てみましたが、内容に対する直接的批判、表層的な捉え方こそある意味日本らしいという皮肉的肯定、批判する人への批判、ネットの炎上も含めてのThis is Japan、等々、批判の先回り競争みたいな感じになっています。
社会問題に無関心な日本人、という外国人の反応を意識した気恥ずかしさもその中には含まれているかもしれません。

俯瞰したフリをしているけど自分はどうなんだと言われそうなので正直な感想を書くと、最初にThis is Japanを見たときは、This Is Americaを見て日本から出てきたアンサーのひとつがこれか~と、脱力してしまいました。

ただその後、This Is Americaを真正面から捉えて作られた「This Is Nigeria」を見たときに、なんともいえない凪状態の感情になりました。ああいうふうにThis Is Japanが作られたらよかったのかというとそれはそれで違う気がしますし、そもそもパロディに正解があるのかという話にもなってきます。

別に彼らは誰かを傷つけたわけでもなく、これが日本からのアンサーだ! という強い意志であの映像を作ったわけでもないと思います。残念ながらうまくはいかなかったけれど、This Is Americaのひとつのバージョンとしての存在意義はあったのではないかと。

今This is Japanを制作した方々がどう感じているのか気になります。

 

炎上のようなネガティブな現象における感情の処理というのは難しいですね。
自分にはまったく関係ないことなんだからと無関心でいるのもひとつの手ですが、そうすると世の中の多くのことがそうなってしまいますし。

最初に自分が受けた印象を大事にしつつ、その感情をそのまま表に出すのではなく、なぜそう思うのかを分析することが大切かなと思います。

最後に「あるある」をひとつ。
日本人、普段あいさつをするときは手を合わせないのに、海外を意識した映像だとなぜか手を合わせがち。

2018.6.6

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